ご挨拶

第17回膵癌術前治療研究会の開催にあたって

 この度、第17回膵癌術前治療研究会の当番世話人を仰せつかり、2023年10月7日(土)に富山県黒部市の黒部市芸術創造センター セレネにて研究会を開催させて頂くこととなりました。本邦の膵癌治療を牽引する本研究会を担当させていただくことは、富山大学消化器・腫瘍・総合外科教室にとって大変光栄なことでございます。このような機会をお与え頂きました海野倫明会長をはじめ、これまで本研究会を支えてこられた本会の役員・会員の皆様に心から感謝申し上げます。 

 本研究会は、2008年に海野倫明会長の号令の下発足しました。最難治癌といわれる膵癌に対する術前治療のエビデンス創出を目的として、多施設の協力・連携のもとに徐々に会員数を増加させて参りました。発足当時、膵癌の治療は拡大郭清が唯一の根治治療との意見が依然多数であり、術前治療は異端という認識の中での出発でした。その後、研究会主導の臨床研究も次々と船出をして、2019年には世界で初めて、切除可能膵癌に対する術前化学療法の有用性を示すPREP-02試験の結果が米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて報告されました。膵癌の標準治療のひとつとして、術前治療が位置づけられたことは画期的なことと存じ上げます。このような状況の中、第17回研究会を開催できることをとても光栄に感じております。 

 本研究会の参加人数は年々増加し、全国から多くの外科、内科、放射線科、臨床病理の各専門医が集まり、膵癌術前治療における諸問題に対して、活発な討論が行われる研究会となっております。今回の研究会のテーマは 「雪嶺の先にあるものは〜beyond the achievement」といたしました。PREP-02試験の結果により、本邦の膵癌治療において術前化学療法を標準治療として示せたことはこの上なく大きな成果だと思われます。しかしこれがゴールであるのか、山頂であるのか、それはまだわかりません。この先には更なる未踏の地が存在しているかもしれず、私たちは休むこと無くさらに歩を前に進める義務があると思います。多様性のある膵癌患者に対する適切な診断法や治療法の確立に関してはまだまだ様々な臨床課題が山積みとなっております。皆様と研究会ならではの忌憚のない討論を行い、解決策を探っていきたいと思います。 

 10月の富山はすでに肌寒さが訪れておりますが、それだけに温泉もお楽しみ頂けると思いますし、きれいな水で作られた美味しいお酒や富山湾の新鮮な海の幸をご堪能頂きたいと思います。学会の合間には美しい剣岳・立山連峰をご覧頂き、富山の豊かな美しい大自然をお楽しみ頂ければと思います。 

 今回の学会は、このような時代であるためなかなか準備も容易ではないことも予想されます。不行き届きの面もあろうかと存じますが、どうかご容赦ください。感染対策を徹底した上で、実り多い学会となるように教室員全員で精一杯尽力する所存でございますので、多くの先生方のご参加を心よりお待ち申し上げます。 

富山大学 学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科